デジタルで絵を描く人の悩みのひとつとして、
「液タブを導入したら、キーボードを置く場所に困るようになった」
というのがある。

液タブを使うときに直面する問題

まず、よくあるのはこういう配置だと思う。

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| 机          | ディスプレイ |            |
|                                     |
| < キーボード > < タブレット > < マウスなど > |
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               < 人 >

これで問題ない場合も多いだろう。

ただ、机が小さかったり、タブレットが大きかったりするとどうだろう。

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| 机           | ディスプレイ |               |
| < キーボード >                 < マウスなど > |
|     < ------- タブレット ------- >          |
------------------------------------------
                < 人 >

キーボードを置く位置に無理が生じがちである。

特に中型以上の液タブを使う場合、キーボードの一部がタブレットの後ろに隠れて押せないとか、そもそもキーボードが置けない、という状況が発生する。
なんとか置けたとしても、キーボード側の手の位置が不自然で、そのため姿勢が悪くなってつらい、なんていう事はないだろうか。

そこで分離式キーボードである。

液タブ + 分離式キーボード = つよい

まずはこちらの画像をご覧いただきたい。

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| 机                       | ディスプレイ |                       |
| < キーボード(半分) > < ------ タブレット ------ > < キーボード(半分) > |
|                                   < トラックパッド >             |
---------------------------------------------------------------
                            < 人 >

(机散らかり過ぎワロタとか、なぜ壁に畳が?とか、ツッコミどころはあるかと思いますが、本筋とは関係ないのでスルーしていただけると幸いです)

分離(分割)式キーボードを使うことで自然な姿勢になるし、すべてのキーが無理なく押せる。

「ペンを持っていないほうの手で押せるキーの数が、半分になってない?」
というのは、鋭い指摘である。

これについては、ペンを持っていない側のキーボードに、よく使うツールを配置すれば大体問題ない。
ペンを持っている側には、たまにしか使わないツールとか、ペンストロークと同時にやらないアクションとかを設定してやる。

ちなみに筆者の場合、右手にペンを持つので、左手側のキーボードには次のように頻繁に使う操作を割り当てている。

  • 文字キー・数字キー: よく使うツール切り替え
  • ctrl + 何かのキー: レイヤーに関する操作
  • shift + 何かのキー: 選択範囲に関する操作

これに加えてショートカットデバイス「tabmate」も併用しているので、右半分のキーボードは描いている最中にはあまり使わない。
(右半分のキーボードで行う操作は、「\(バックスラッシュ)」に割り当てている「画面全体の塗りつぶし」くらいだ)
それでいて、レイヤー名変更などの際は、右手をタブレットから少し右に動かすだけで自然に文字入力できる。

分離式キーボードは、デジタル絵描きにとってひとつの答えであると思う。

分離式キーボードのデメリットはある?

ただし分離式キーボードには、その便利さとトレードオフになる部分もある。
それは、分離式キーボードには比較的高額な製品が多いことだ。
理由は多分、分離式キーボードを必要とするユーザ層にはパワーユーザが多いであろうことや、通常のキーボードと比べて生産数が少ないこと等によるものだろうと推測する。

あと、分離式キーボードはタイピングに意外と慣れが必要だという点も挙げておくべきだろう。
ただし慣れは人によるし、ショートカットデバイスとしての使用が中心となるなら、そんなに気にしなくていいかもしれない。

あとはなんだろう。
人に見られると、
「キーボードが割れているよ」
とツッコミを受けることとか、変態扱いされる場合があることなども、デメリットかもしれない。

おすすめの分離式キーボードは?

ではここで、おすすめの分離式キーボードを紹介しておく。
これはそのまま筆者が使っているキーボードだが、
「MiSTEL BAROCCO MD600 (RGB)」である。

2019/04/18追記:MD600が品薄のようなので、記事の一部を修正しました。リンク先の商品のタイプや型番が別のものに変わる可能性もあるので、購入前によくお確かめください。

 

光るやつ(MD600 RGB)

 

光らないやつ(MD600)

 

このキーボードのいいところは、次の点だ。

  • コンパクトタイプなので、机の面積をとらない
  • バックライト付きのモデル(MD600 RGB)は光るのでかっこいい
  • 分離式キーボードの中では比較的安価(品薄により値上がり中。ただし新型のMD650が発売されていてそちらは比較的安価)
  • キーのカスタマイズが柔軟にできる

 

一方、ちょっと難しい点もある

それと、これはメリットともデメリットともいえない点なのだが、キーボード自体の重量が割と軽い。
そのため持ち運びや取り回しがしやすい代わりに、使う場面によっては安定感に欠けると感じるときもある。

 

大きさの比較として。
ハクメイとミコチ7巻を横に置くと、キーボードのコンパクトさがよく分かるだろう。
ハクメイとミコチは面白い。好き。

 

付属のケーブルについて

ここで、左右のキーボードをつなぐケーブルについては、注意が必要である。
付属のケーブルはカールしていてしかも妙に硬いので、左右のキーボードをあまり離して置くことができない。つらい。
ただし、これは他のケーブルに換えることで解消できる。
筆者はこのケーブルを使っている。

と、ここまで書いてから気付いたのだが、日本語配列・赤軸のMD600のレビューを見ていると、最近はどうも付属のケーブルとして、「硬いカールケーブル」ではなく、「まっすぐなケーブル」が入っているらしい。

これからMD600キーボードを買おうという方は、交換ケーブルを別途手に入れる必要はないかもしれないことを、書き添えておく。

BAROCCO MD600の種類と選び方

なお、このキーボード、いくつか種類がある。
分類の軸としては、
配列(US・日本語) × キーの軸(赤、茶、黒など) × 光るか光らないか(RGBと無印)、
である。
このうち、光るほうのUS配列版はなぜか価格が高騰中である。(2019/01現在)
筆者は高騰前に光るUS配列の黒軸モデルを買ったが、日本語配列に慣れている人は素直に日本語配列モデルでいいだろう。

それと、キースイッチのタイプ(色)が選べるようになっているが、一般的には「茶軸」「赤軸」あたりが使いやすいとされている。
筆者は他のキーボードで「赤軸」を使っているが、これはキータッチは軽いし変なクリック感もないので、個人的には好みである。
ちなみに筆者の「MD600 RGB」は「黒軸」で、独特なキータッチであり、万人におすすめはしづらい。
「黒軸」は「赤軸」のキータッチを重く、反発を強くした感じだ。

ついでに他のキースイッチにも触れておく。

「茶軸」は軽いキータッチで、ゆるいクリック感がある。ある程度押し込んだらストンと落ちる感じだ。筆者は赤軸系のリニアな押下感が好みなので、あまり茶軸は使ったことがない。クセは無いほうだとは思う。

「青軸」はすごくクリック感がある。そしてタイプ時にカチカチ音が出る。底打ち音ではなく、機構的に音が鳴るようになっている。このクリック感とクリック音で、確実にキーを押したというフィードバックが得られる。ただしすごく音が出るので、使う場面を選ぶかもしれない。このフィードバックが強く得られるという特性は、多分ゲームとかにいいんだろうなと思うが、もしかして絵を描くときの左手デバイス的な用途には結構向いているのでは?とも思える。ちなみに筆者は、青軸のキーボードは職場に置いてあるので、たまに使う機会がある。タイプすると「うるせえww」と感じるが、同時に何か快感も覚えるのは事実だ。

キーの好みは本当に人それぞれなので、メカニカルキーボードを触ったことがないという人は、できれば家電量販店などで実際に(MD600でなくていいので)メカニカルキーボードを触ってみることをおすすめする。

個人的には「スピードシルバー軸」が気になって仕方がない。いずれ機会があれば試したい。

脱線したので話を戻す。

近い別の方法

近いアプローチで、分離式キーボードを使わない他の道もある。
キーボードを2つ使うと、分離式と似たようなことができる。

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机          | ディスプレイ |
< キーボード >             < キーボード >
    < ------- タブレット ------- >
                         < マウスなど >
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ただ、机の上にキーボードが2つ載ることになる。キーボードの専有面積が純増する。
場合によってはこの「キーボード2つ使う戦略」が有効かもしれないので、一応挙げてみた。

まとめ

分離式キーボードが姿勢の悪さを解消するかもしれない。
トラックパッドも組み合わせると、机の上はさらにすっきりする。

液タブや分離式キーボードを買ったからといって絵が上手くなるわけではない。
ただし、もし絵を描くこと以前に姿勢の悪さや空間的制約で消耗しているなら、それらを解消することにより、もっと絵を描くことに集中できるだろう。
そのための1つのアプローチとして、分離式キーボードを紹介した。
あと光るキーボードはかっこいい。

 

キーボード好きな柴太

光るやつ

 

光らないやつ

 

ハクメイとミコチ 7巻

補足:サイズについて

上の画像のペンタブレットは、XP-PENのArtist16 Proだ。

液タブとしては比較的安価だが、液タブを初めて導入した筆者にとっては十分に使えている。

上記の画像に写っている物のサイズについて補足しておくと、液タブの画面サイズは対角15.6インチ、
筐体サイズは横幅約40cm×高さ約25cm、奥行きはスタンド含めておよそ26cm前後だ。

机のサイズは横幅70cm×奥行き60cm。
この横幅だと、Artist16 ProとMD600が、MD600をナナメにしてかろうじて横並びに収まるくらいである。
筆者は状況に応じて、右半分のキーボードを液タブの奥に置いたりして使っている。