前回の記事(作話はタコ焼き。「マンガの学校〈1〉短編マンガの描き方」)で紹介した書籍「短編マンガの描き方」で、
「構成力を高めるトレーニング」という練習法が紹介されている。
これは何かというと、以下の2つの力を鍛えるものだ。
- 既存の作品から「ストーリーのパターン」を抜き出す力
- 「ストーリーのパターン」から具体的な「おはなし」を作る力
これを続けていくことで「ストーリーのパターン」を扱う力がつき、
その過程でパターン自体も増えていくことになる。
ストーリーは発明するものではない
ストーリーは、既存のパターンを集めて組み替えて使うもの。
だから「パターンをたくさん知っていること」と、
「パターンを使いこなせること」がストーリー作りでは強みになる。
そのための構成力トレーニングである。
ただこのトレーニング、原著の通りにやろうとすると、
私の場合若干取り掛かりづらかった。
そこで手順を分解してやりやすくした方法を考えてみたので、
(自分用の整理も兼ねて)後半で紹介する。
構成力トレーニング(原著版)の概要
原著のやり方を、以下に簡単に紹介する。
流れとしてはこうだ。
A 要約 → B 抽象化 → C 再構成
A 要約:
自分の好きな漫画や小説作品を用意する。
その作品を要約して、あらすじ程度にまとめる。
B 抽象化:
Aで要約したストーリーから、具体性をとり除いてパターン化する。
C 再構成:
Bで抜き出したパターンを、元ネタとは別の具体性をつけてお話にする。
このトレーニングのハードルをどうしたら下げられるか、
おはなし作りに不慣れな私でもできるように工夫してみた。
【手順分割版】構成力トレーニング
一度に考えることが少なくなるよう手順を分割して、工程の名前も変えてみた。
- 事実の列挙
- グルーピング
- 抽象化-1
- 抽象化-2
- (再具体化)
1〜3が「A 要約」に、4と5がそれぞれ「B 抽象化」「C 再構成」に対応している。
以下に各工程について述べる。
準備するものは原著と同じく、以下の2点。
- 好きなフィクション作品(最初は、短く完結しているものが簡単だろう)
- 作業するための紙、PCといったツール
なお作業を行うのは紙でもデジタルでもいいが、私は簡単に行うためにdraw.ioを使った。
1. 事実の列挙
題材とする作品において、起こっていることを列挙していく。
ここではとにかく全ての出来事を具体的に、細かめの粒度で列挙する。
箇条書きが良いだろう。
こうして「出来事リスト」を作る。
セリフなどは極力入れないように、客観的に事実を文字にしていく。
事実以外の装飾的な部分は除く。
パッケージングされた作品を、この後の工程で取り扱い可能な形に変換することが目的だ。
この後の工程ではこの「出来事リスト」を見ながらトレーニングしていく。
2. グルーピング
「おはなし」を構成する単位を意識して、1.で列挙した事実をグルーピングしていく。
別の言い方をすると、ストーリーの分割可能な単位を探す、という工程だ。
やり方としては、1.で作った「出来事リスト」の項目と項目の間に、線を引いていく。
線と線で区切られた部分が1単位だ。
ここが1単位だ、と思う部分を四角形で囲むのでもよい。
どこからどこまでがまとまりか分かれば、なんでもよい。
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ここで最も考えるのは「どういう単位でグルーピングすべきか」ということだろう。
何が大事なのか、どこからどこまでが一括りにできるのか、この出来事グループはストーリーにおいてどういう役割を持つのか。
グルーピングの工程は、それを考えるためのトレーニングだ。
次の工程と行ったり来たりしながら考えることになるので、
とりあえず一回目はざっくりで良い。
3. 抽象化-1
2.で作った出来事グループを、短い文で書き直す。
つまり要約だ。
「出来事リスト」を見て、
「グルーピングされたいくつかの事実をまとめると、要するに何が起きているのか?」
を考える。
この作業を行っていると、グルーピングの単位がうまくないと思うときがあるだろう。
もっと分割すべきだと気付いたときや、分割しすぎてひとまとまりになっていないと気付いたときだ。
そういうときは2.に戻ってグルーピング単位を考え直す。
こうして「要約された出来事リスト」を作る。
原著のやり方だと、ここまでの「文章化」「物語単位の分割」「分割した単位の要約」を、
まとめて「A 要約」としていた。
私の場合、一度にやることが多すぎて難しく感じてしまったので、あえて3つの手順に分割してみた。
4. 抽象化-2
ここまでで作った「要約された出来事リスト」を、「ストーリーのパターン」まで抽象化する作業がこれだ。
「要約された出来事リスト」は、
あくまで元の作品が元の作品だと分かる程度の抽象度で、出来事を抽象化したものだった。
ここではもっと抽象度を上げて、元の作品が何だったのか分からなくする。
例えばこうだ。
柴太は昨日の夜、大阪のラーメン屋で長浜ラーメン(にんにく入り)を食べた。替え玉も注文した。(元の出来事)
↓
柴太がラーメンを食べた。(要約した出来事)
↓
人が何か食べた。(パターン化。テンプレ化といってもいい)
どこまで抽象化するとパターンとして成立しなくなるか。
それを考える。
ここまでが冒頭で述べた、
『既存の作品から「ストーリーのパターン」を抜き出す力』を鍛えるトレーニングだ。
具体を捨てて構造(パターン)をあぶり出していく。
5. (再具体化)
ここでは4.までとは違って、『「ストーリーのパターン」から具体的な「おはなし」を作る力』を鍛える。
4.で作った「ストーリーのパターン」に、元の作品とは別の具体性を与えて、別のおはなしに仕立て上げる。
できるだけ元の作品とはかけ離れた具体性を探すほうが、よりトレーニングになるだろう。
コツとしては、これをそのまま作品にしてしまおうと思わないことだ。
行き詰まって悩み続けるより、サクッとやって次のトレーニングをしたほうがよい。
それと、この再具体化の工程はオプションとして捉える。
できればやる、くらいでいい。
再具体化のトレーニングは、ここまでのトレーニングとは切り離して考えられる。
いくつかパターンがたまってきてから、
「このパターンにはこんなキャラや設定があてはまりそうだな」
と気付いたときにやるので構わないだろう。
もちろんできるならやったほうが良い。
まとめ
構成力を高めるトレーニングと、自分なりに考えた手順を紹介した。
慣れれば原著通り3つの手順でトレーニングできるようになるだろう。
もう一度原著を紹介しておく。
構成力トレーニング以外についてもかなり参考になるので、
漫画作話に興味のある方は読んでみてもいいかもしれない。
柴太
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