メール = Male = 男性

 

前回の記事で女性の描き方本を紹介した。

いくら女性を描くのは楽しいといっても、
そればかり描いていると飽きてこないだろうか?
私は飽きる。

そして男性を描きたくなる。

ついでに言うと、ポーズ集を描き続けていると静かなポーズにも飽きてきて、
だんだんと刺激を求めるようになる

もっと躍動的な肉体を描きたい。

これらの欲求を同時に満たすのが「メール・ヌード・コレクション」だ。

 

「メール・ヌード・コレクション」の見どころ

この本の面白いところを紹介する。

動きまくっている

ただ動いているのではない。

普通のポーズ集ではあまり見ないような、非日常的なシチュエーションの動きが多い。

はっきり言ってその様子は筆舌に尽くしがたいのだが、
参考にいくつかのポーズを紹介してみる。

  • 踊りながら着ているものを脱ぎ捨てる
  • しなる棒をへし折ろうとする
  • 槍をかかげて地面から1メートルくらい跳び上がる

他に走ったり跳んだり、しゃがんだり転がったり、ロープにぶら下がったり角材とたわむれたりする。
寝転んだポーズはほとんどない。

重要なのは、それぞれのポーズがモデルの筋肉の様子や関節の可動域を、
余すところなく読者に見せつけていることだ。

日常的なテーマのポーズ集ではなかなか見られないような状態を、じっくり見られる。
そういう意味でこの本は貴重だ。

本気の、全裸

メール・ヌード・コレクションは、その名に違わぬ「ヌード」集だ。

邪魔な布は一切不要。

そう言わんばかりに全裸だ。
局部の消し込みなどもない。

おかげで腰回りの様子がよく分かってありがたい。
ポーズの緊張感もよく伝わってくる。

実用性?用途による。

例えば写真集のポーズをそのままイラストに使いたいような人。

そういう人にはあまり向かないかもしれない。
そういう意味での「資料」ではないように思う。

この本はこんな人にオススメだ。

  1. 男性を描く練習がしたい
  2. 女性を描くのにマンネリしている
  3. 静かなポーズにマンネリしている
  4. ラクガキのネタがほしい

私の場合、基本的に「4. ラクガキのネタがほしい」にあたる。
適当にページを開いても何かしら描きたい意欲をそそるポーズが載っていて、
「ラクガキしたくてネタを探しているうちにやる気がなくなる」
といったことを防げる。

これって結構重要なことだと思うのだが、どうだろう。

 

ボリュームも結構ある

以下に目次を引用する。

  • PROLOGUE
  • SCENE・ONE 美術作品の中に見るポーズ
  • SCENE・TWO 道具によって生まれるポーズ
  • SCENE・THREE 軽い動きの中のポーズ
  • SCENE・FOUR 表現する肉体のポーズ
  • SCENE・FIVE 光と視線で変化するポーズ
  • EPILOGUE

PROLOGUE:
4名による導入文。コラム。具体的な技法の説明ではないが、興味のある人には面白い読み物のはず。

SCENE・ONE:
絵画や彫刻のポーズを、モデルが再現している。
美術作品の写真とモデルのポーズが並べて掲載してあって面白い。
「考える人」のポーズなどは描いていて楽しい。

SCENE・TWO〜SCENE・FIVE:
モデルが様々なポーズをとっている。
ちなみにこの本は全編モノクロだ。
ここは好みが分かれるところかも知れないが、陰影をとらえるぶんには不足ないだろう。

EPILOGUE:
メイキング集的な何か。
「モハンエンギ」「ソウジ」など、なぜかカタコトで説明が添えられている。
なんかシュール。

 

巻頭の読み物10ページ弱 + メインのポーズ集140ページ強、という構成だ。

メインのポーズ集部分のボリュームは充分と言える。
1ページ1ポーズの大きな写真も多く、描きやすい

 

 

男を描く楽しさとは?

男性と女性は別の生き物。
描けば描くほどそう思えてくる。

男性を描く楽しさとは何なのか、考えてみた。
以下にいくつか挙げてみる。

ゴツゴツしたラインを描くのが楽しい

女性の体は脂肪で覆われていて、筋肉のデコボコがあまり表面に表れない。
結果として体のラインもやわらかいものになる。

男性の場合、筋肉の形が体の表面に表れやすく、
体のラインが直線的かつ起伏の大きなものになる。

これを描くのが楽しい。

描いた絵からエネルギーを感じやすい

筋肉質な男性だと、
エネルギーの溜まっている部位が張り詰めたり膨らんだりする様子が、
ハッキリと視覚化されやすい。

力のこもり具合が分かりやすいということだ。

そのため5分間程度でクロッキーしただけでも、
自分で描いた絵からエネルギーを感じられて嬉しい。

鉛筆を大きく動かせる

女性を描くときと比べて、男性を描くときは鉛筆を大きく速く動かす。
筆圧も強くなりやすい。

大きく強く描くと単純に気分が良い。

下手でもいい。
気持ちをのせて描けた線は、後から自分で見ても気分がいいものだ。

 

女性を描くと、男性を描くのも楽しくなっていく

女性を描けば描くほど、比例して男性を描くのも面白くなる。
両者の間にギャップがあるからだ。

もし今までどちらか一方しか描いてこなかったとしたら、
それは描くのがより楽しくなる余地がある、ということだ。

当然男性ばかり描いていれば飽きてくる。

そのときは女性を描くのだ。
男性を描けば描くほど、女性を描くのも面白くなる。

 

まとめ

本書は1994年初版発行と、ちょっと古い本で、
中古本しか流通してないかなと思ってamazonを見てみたところ、
まだ新品が売っていた。

それだけ支持されているということだろう。

ちなみに私がこの本を手に入れたのは、もう8年くらい前になる。
本棚の肥やしになることなく、今も活躍している。

かなりおすすめのポーズ集だ。

 

柴太